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【小説】「公衆便所男⑬」

結局、私はウンコをせずに愛車Lexusへと戻った。

 厚木ICkmから60km強の距離を走り、沼津ICで高速を降りた。時刻は11:00を回ったところである。
 とりあえず、伊豆には着いた。しかし、一体どこへ行けばHello山下を見つけることができるというのか?奴からのメッセージは

【11月18日15:00 伊豆にて待つ】

 だけであった。これではあまりにも漠然としすぎている。ひとくくりに「伊豆」と言っても、非常に広範囲だ。私は伊豆のどの辺りに行くべきなのか?今からそれを考える必要がある。
 とは言え、考える材料が何も無い。唯一あるとすれば

【Hello山下はYou自身 Hello山下は左きき】

 という、夢の中で聞いた謎のメッセージだが、これは明らかに場所を特定するヒントにはならない。何か他に手がかりがある筈だ。それを早くみつけなければ―もたもたしていると、指定時刻の15:00を過ぎてしまうだろう。

 道路を走っていると、左側にセブンイレブンがあった。「7」のマークをぼんやりと眺めていると、私は猛烈な空腹感に襲われた。そういえば朝から何も食べていない。速度を落として、私はセブンイレブンの駐車場に車を止めた。
 何か食べ物を買うことにしよう―そう考え、自動ドアを潜った瞬間、ある考えが頭に閃いた。

 もしかすると――――
 店員に一声かけ、私はトイレへと向かった。

「・・・やっぱりあった…!!」

 思わず声を出してしまった。
 トイレに入った瞬間、私の目に飛び込んできたのは鏡に張られた張り紙であった。

【ピンポォォォォン♪大正解wなかなかいーセンスしてるじゃん。それじゃ、土肥金山へGoだ!!!】

 見覚えのある汚い字―間違いなくHello山下の筆跡である。奴との接点は常にトイレにあった。常に答えはトイレットに存在すのである。やはりHello山下は私をどこかで見張っている。私の先回りをして、悪趣味なイタズラを仕掛けていくのだ。

 ともかく、これで目的地は決まった。私はサンドウィッチと缶コーヒー、眠気覚ましのブラック・ブラックガムを購入すると、愛車Lexusへと戻った。サンドウィッチを頬張りつつ、カーナビに「どいきんざん」と打ち込む。カーナビは土肥金山へ続く一本の道を指し示した。<目的地まで、60kmです>と、カーナビが告げる。
 
「もうすぐ対面だ山下ァァァ!!!!!]

私はLexusのサイドブレーキを解除し、ギアをドライブモードに入れようとした。

(ん・・・?)

 その時バックミラーに<見慣れないもの>が映りこんでいることに気づいた。振り向いてみると、後部座席にビニール袋が放置されている。まったく身に覚えの無いものだ。

(なんだ?)
 私はビニール袋をこちらへ引き寄せ、中身を検めた。


「…これは…!?」

 中に入っていたのは、大量のイチジク浣腸器であった。図書館のトイレで発見したものと同一の製品である。
 Hello山下が車内に侵入したのか?間違いなくドアはロックした筈である。もしかすると、ずっと前から車内にあったものかもしれない。今朝は異常なまでに精神が高揚していた為、気づかなかったのではないだろうか。この短時間の内にドアロックに細工をし、Hello山下が侵入したとは考えにくい。Lexusのセキュリティシステムは伊達ではないのだ。恐らくは自宅で奴のラクガキを見つけたあの日から、このイチジク浣腸器はここに置かれていたに違いない。

 そこまで考えた後、私は我に帰った。それどころではない。Hello山下との対峙は目前である。イチジク浣腸器がいつ置かれたか、など極めて瑣末なことである。今は奴と如何に対峙し、如何に捕獲するべきかということに全ての思考を集中すべきである。

 私はLexusのアクセルを全開まで踏み込んだ。

                       (続く)   文責:魔王源

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2008年12月07日 17:26に投稿されたエントリーのページです。

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