新曲発表が優先するのでこっそりアップ。ほいではいきます♪
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カーテンから差し込む陽の光で私は目覚めた。
「夢…か…。」
ベッドの上で呟いた。時刻はAM11:00を回ったところだ。
それにしてもイヤな夢だった。Hello山下は、ついに私の夢の中にまで現れた。奴のお陰でもう二週間はぐっすりと眠れていない。
【Hello山下はYOU自身 Hello山下は左きき】
私は夢の中でHello山下が言った謎のメッセージを手帳に書きとめた。無論これは夢の中で出た言葉であり、現実のHello山下とは何の関係もない。しかし、何か引っかかるものがある。もしかすると手掛かりになるかもしれない。「夢を通して問題解決のヒントを得る」というのは歴史の中に何度も登場するエピソードである。心理学者達はこの奇跡的な現象を潜在意識からのメッセージとして説明している。そのような奇跡が私の身に起こらないとも限らない。少なくとも覚えておいて損はないと思った。
今日は11月17日の日曜日だ。明日は伊豆へ向かうことになる。月曜日だが有給休暇を取得済みだ。約束の時間である15時までにはなんとしても伊豆に辿り着き、Hello山下を捕縛しなくてはならない。
それにしてもHello山下とは何者なのだろう?これまでに起こった事件から総合的に判断して、どうやらHello山下は【私をよく知る人物】であるようだ。
当初私は、Hello山下を単なる物好きなトイレマニア位にしか考えていなかった。しかし、私のマンションに奴のラクガキを見つけた今となっては、そうは思わない。奴は私のトイレット・ルートを入念に調査した上で意図的にメッセージを残している。
一体全体、何のためにそんな事をするのか?単なるイタズラにしてはあまりにも手が込み過ぎている。これ程の労力を払ってラクガキを仕掛けている所を見ると、Hello山下には何か「動機」がありそうだ。その動機とはなんだろう?怨恨の類だろうか。
Hello山下はA電機の人間だろうか?出世には全く興味のなかった私だから、A電機の同僚に恨みを買うような真似はしていない筈だ。唯一可能性があるとすれば労働組合の連中だろう。A電機在籍時代、私は組合が強い影響力を会社に持っていることを利用して、かなり悪質なサボタージュを行った。私の職務怠慢は上層部でも問題となり、このため労働組合は活動の規模を縮小せざるを得なくなった。そのことで私に恨みを抱いている組合の人間が存在しても不思議ではない。
当時組合を仕切っていたのは「大垣」という男だった。だとすると大垣がHello山下の正体であろうか?
そういえば、私と大垣は同じ大学出身である。大垣はいわゆる所の「アカ」であった。私が大学にいた頃は、全共闘の紛争もとっくに終わっており、本気で国家を転覆させようなどと企てる学生は皆無であったものの、共産党カブレの連中は少数ながら存在した。
大垣はそんな連中の一人だった。確か「ニッポンのミライをアカるくする会」とかいう胡散臭いサークルに所属していた筈だ。大垣はサークル活動の一環として、環境問題だの人種差別問題だのを取り上げては拡声器片手にアジテーションを行っていた。このアジテーションは極めて軽薄であり、その主張には全く一貫性がなかった。その時々、世間で話題となっている旬の社会問題を槍玉に挙げて、重箱の隅をつつくような批判を浴びせていたに過ぎない。実のところは注目を浴びたいだけのデモンストレーションであった。
大垣のやっていた事は実に無意味でくだらないものばかりであったが、この活動が当時A電機で労働組合長をしていた男の目にとまった。それで大垣は4年も留年していたのにA電機に入社できたのだ。
そう考えてみると、Hello山下が大垣である可能性は薄い。大垣は単に働くことが大嫌いであり、仕事をサボるためにゴネているだけであって、確固たる思想や信念からは程遠い男だからだ。あの大垣が組合の活動規模が縮小した位の事で復讐を考える訳がない。実のところ、仕事が少なくなって喜んでいる位だろう。
となると真犯人はBEFREEの人間だろうか。さしたる危害を加えた覚えは私にはないが、彼らにとって私が疫病神であることは間違いない。BEFREE社員の月給は経営陣クラスでも30万強だが、私は手取りで42万も貰っている。これは、私がA電機からBEFREE移籍を打診された時の交渉の成果だ。
「地位や役職・職場環境などはどうだっていい。賃金だけはA電機と同程度貰わなくては辞令は受け入れられない」
と、私は決死の覚悟で上司に食い下がった。どのみち真面目に働く気などないから左遷は一向にかまわないが、生活レベルを下げさせられてはたまったものではない。私は現在のマンションから引っ越すつもりはないし、愛車Lexusの維持費もバカにならない。熱帯魚に餌だってやらなくてはいけないし、週に一度のおっぱいパブ通いだって止める気はないのだ。そんな訳でBEFREEにとって私の存在は随分な負担になっている筈だ。だから、嫌がらせを受けている可能性は十分にあり得る―――
と、そのような思索に耽っていると、時刻はPM5:00を回っていた。私は冷蔵庫から発泡酒とチーズ鱈を取り出し、TVのスイッチを入れてソファに座り込み、発泡酒と呷った。
「Hello山下・・・必ず見つけ出して成敗してやる…!!」
ニュース番組を見ながらそう口にすると、心が高揚してきた。明日が待ち遠しい。まるで遠足に行く前日の小学生のような気分である。
ふと窓を見やると、11月の太陽がビル街に沈もうとしていた。
(続く) 文責:魔王源
