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2008年11月 アーカイブ

2008年11月01日

【小説】「公衆便所男⑦」

 が、またしても―――
 私を待ち受けていたのは「HAPPY排便END」ではなく「苦い結末」であった。

 私は勝利の喜びに胸躍らせ、大個室のドアを勢いよく開けた。
 すると、猛烈な臭気が私の鼻に襲い掛かってきた。「臭い」などというレベルではない。長年公衆便所に通い詰め、数え切れないほどの【残り香】を味わい続けてきた私だが、これ程のウンコ臭は経験したことがない。腐敗臭ともチーズ臭ともドリアン臭とも知れぬ、得体の知れない未知の悪臭である。
 
 私は思わず口を覆った。体の芯から吐き気がこみ上げてくる。
 流していかなかったのか?またもそのパターンか?私は便器内を覗き込んだ。しかしそこに、ウンコの姿は見当たらない。だとすれば本体はどれ程の臭気を放っていたというのか?私は戦慄を覚えた。
 そのとき私の目に意外な物が目に飛び込んできた。半透明ポリエチレン製の、異様な形状をした容器が7つ――
 まさしくそれはイチジク浣腸器であった。浣腸器が内包されていたと思われる袋と箱もまた、便器の裏から発見された。

 一体何がどうなっているのだ?日本はもう滅茶苦茶だ。もう全てがオシマイだ。何故、人類の英知が結集した神聖な場であるところの図書館のトイレで、イチジク浣腸器が使用されるのか?しかも、7つもである。7つも使用する動機は何なのだ?そんなに詰まっていたのか?それほどまでに蠕動運動を怠慢する大腸とは、どのような大腸なのか?そもそも浣腸器を使用してまで、この場所で排便する事に何の意義があるというのだ。私は混乱し、半ば錯乱状態に陥って頭をガンガンと個室の壁にぶつけた。
 その壁に、またしても見つけてしまったのだ。

「Hello山下!!!参☆上~♪ どう?びっくりした?」

 最早私の中でおなじみの人物と化した男―Hello山下である。私のトイレットルートをことごとく先回りし、私を嘲笑うかのようにメッセージを残していく謎の男…一体Hello山下とは何者なのか?

 こうなれば、いかなる手段を用いてもHello山下なる人物を見つけ出し、成敗してやらねばならぬ。この野郎は全国の公衆便所愛好家の敵である。神聖なる公衆便所に不愉快な落書きを書き散らし、あろうことかイチジク浣腸器を7つも使用して、猛烈に悪臭を放つウンコをひり出し「どう?びっくりした?」人を食ったようなメッセージを残していく男…この男だけは絶対に許せない。

 いち公衆便所愛好家として、私はこの男を粛清する義務がある。
 今や私の中には、奇妙な使命感のようなものが生まれつつあった。

 私は足早に図書館を後にした。

                                (続く)文責:魔王源

2008年11月08日

【小説】「公衆便所男⑧」

 時刻は15:00を過ぎた。
 私は自分がとてつもなく愚かな行為をしている事に気づいた。午後休を取ったのだ。自宅に戻ってトイレに行けば良いではないか。最早公衆便所に拘る理由はない。私は帰宅することにした。

 30分後、私は自宅のドアノブに鍵を差し込んでいた。家賃10万8000円・共益費・駐車場代込み・風呂トイレはセパレート・マンションタイプの2LDK。これが我が家のスペックだ。
 ちなみに私は独身である。43歳にもなって男やもめでいる事に対し、周囲の反応は芳しいものではないが、それがどうしたというのだろう。実に大きなお世話だ。A電機在籍時など、同性愛者疑惑まで立てられたのだ。よもすれば、その噂が原因で現在の会社に左遷されたのかも知れないのである。まったくもって噂という奴は恐ろしい。事実無根・根も葉もない全くの出鱈目であっても、ひとたび広まってしまえば真実と区別がつかないのである。
 まあ、そんなことはどうだっていい。今現在大切なことは「トイレ」であり「ウンコ」である。会社の事など忘れてしまおう。気持ちよく排泄をしてスッキリしたら、ビールを呑んで寝るとしよう。

 などという事を思いつつ、私はトイレのドアを開けた。
 そこで私は【見る筈がないもの】を見てしまったのだ。

「Hello山下!!!!参上だYOooooooooooooooooooonnnnn!!!!!!」

 私は自分の目を疑った。ここは私の自宅である。何故Hello山下の落書きが存在するのか?驚いた私はトイレを飛び出し、侵入者の形跡を探した。押入れの奥に隠してあるタンス預金も調べた。しかし、物を取られたわけでもなく、猫の子一匹入り込んだ跡は見つからなかった。
 だとすれば何故だ?何故Hello山下の名前が我が家のトイレに残されているのか。不思議なことにこの時、私の頭の中に恐怖は存在しなかった。Hello山下なる不届きに対する怒りと共に、奇妙な好奇心が沸々と湧き上がった。「必ずやこの無法者を見つけ出し、相応の制裁を加えてやる」という決意が私の心を高揚させていた。

 (何か手掛かりがある筈だ…!)

 そう自分に言い聞かせ、部屋の中を探し回った。TVの裏を覗き、洗濯機を持ち上げ、クローゼットの中を掻き回し、必死に痕跡を求めた。
 そしてついに、Hello山下へと続く重大な手掛かりを発見した。冷蔵庫の側面に、マグネットで付着するペンホルダーを貼り付けてあるのだが、そこに見覚えのないサインペンを発見したのだ。明らかにそれは、我が家のものでなかった。
 私はサインペンを手にとってみた。思わず強く握り締めてしまう。このちっぽけなサインペン一本が、憎き無頼漢Hello山下の居場所へ導く道しるべになるのだと思うと、嫌が応なく力が入る。
 ペンは太字と細字、2種の線が引けるタイプのものだった。両端がペン先となっている。
 このペンが、これまでの犯行に使用されていたのだろうか…ふいに私は書き味を試してみたくなり、太字の方のキャップを外した。
 するとそこから、丸まった紙辺がひらひらと落ちた。どうやらキャップの裏側に挟まっていたようだ。それを見た私は興奮し、ロールした紙辺を広げた。
 そこには、


      「11月18日 15:00 伊豆にて待つ」

 と、見覚えのある字で書かれていた。
 明らかにそれは、Hello山下からのメッセージであった。本日は11月4日である。今日から数えて14日後に、Hello山下は伊豆に現れると宣言している。
 無論ブラフの可能性は否めない。これまでの落書きから察するに、奴の人格は相当捻じ曲がっている。油断のならない狡猾な男だ。
 だが、不思議と「ブラフではあり得ない」という気がした。Hello山下は必ず伊豆に現れる。私は確信に近いものを感じた。
 奴は、

 伊豆に行きました。
 Hello山下は見つかりませんでした。
 単なるブラフでした。
 全くの徒労に終わりました―――

 程度の嫌がらせで満足する男ではない。間違いなく二重三重に入り組んだトラップを仕掛けてくる筈である。
 明らかにこれは罠だ。それは重々承知している。ならば、あえて罠に飛び込んでやろうではないか。必ずや私は、奴の裏を書いて正体を暴いてやる。徹底的に謝罪させよう。私の面前で土下座させて、頭に唾を吹きかけてやろう。そして、これまで公衆便所に書いた落書きを、ひとつ残らずHello山下自身の手で消させてやろうではないか。
 
                       (続く)

2008年11月15日

【小説】「公衆便所男⑨」

 桃色の空間を、私はどこまでも漂っていた。
 とても良い心地だ。どこまでも続く、何もない世界。静寂に支配された小宇宙――そこは楽園だった。
 そこには私を邪魔するものは何もなかった。会社も、わずらわしい人間関係も存在しなかった。
 私は一糸纏わぬ姿で浮遊していた。そうしているうちに私の肉体は空間に溶け出し、やがて消えてしまった。

 とても良い心地だ。
 いつまでもこの場所に留まっていたい。心からそう思った。

 肉体を失った私は、意識のみの精神体となって浮遊を楽しんだ。こんなに気持ちが良いのは物凄く久しぶりだ。私は大声を出して笑った。(肉体は存在していないので、厳密には笑っていないのだが、そのとき私はそう感じた。)最後に大声で笑ったのはいつだったろう?遠い昔だ。恐らく20年以上前―小学生の頃だったろうか。
 私の人生は完璧だった。第一志望の大学に入学し、第一志望の有名企業に入社した。収入は大学の同期の中でもトップクラスで、金に困ったことは一度もない。「私はA電機の社員だ」と言えば、誰もが私に一目を置いた。
 誰の目から見ても私は成功者だった。両親は私をいつも自慢していた。私は求めるものを全て手に入れた。私は「成功者」なのだ。だから私は幸福なのだ。世間には、日々の食事にも困るような貧困生活を強いられている者が無数に存在する。年金・健康保険も払えないような甲斐性無しの無能な者達が無数に存在する。ワーキングプアーの派遣社員達は月に200時間の残業を強いられ、手取り20万円の月給で生活している。そんな彼らに比べて私は圧倒的に幸福だ。私の月給は手取りで42万ある。ボーナスは120万円が年2回だ。BEFREEに転属が決まってからはボーナスは半分に目減りしたが、それでもその日暮しが精一杯な者共に比べて私は圧倒的に幸福だ。私は税金をきちんと払っている。私は生命保険にも加入しているし、クレッジットカードも3枚持っている。もちろん不渡りなど出したことはない。ローンだって組める。これらの情報から論理的に判断して、私は「成功者」なのだ。冷静に、客観的に見て私は明らかに「勝ち組」なのである。
 
 なのに何故、こんなにつまらないのだろう?
 なのに何故こんなに孤独なのだろう?

 私は「成功者」だ。私は「勝ち組」だ。子供の頃から厳しい受験競争を勝ち抜いて、やっと手に入れた「成功者」の称号だ。人々はもっと私を尊敬すべきだ。どれだけ私が苦労したか、誰もわかっちゃいない。私を敬え!私を愛せ!私にひれ伏せ!もっと私に優しくしろ!!!!!!

 気がつくと私は肉体を取り戻していた。桃色の空間は次第に形をとり始めた。青い色のタイル、白い色の陶器、金属のパイプ。四方を壁に囲まれた馴染み深い空間――そう、ここは【公衆便所】だ。私にとってかけがえのない、唯一の【居場所】だ。この狂った現代社会から隔絶された【最後の砦】だ。ここにいる時だけは私は私のままでいられる。外へ出れば疑心暗鬼と憤怒と憎悪と欲望の入り混じった世界が存在している。
 私はこの世界が大嫌いだ。唯一嫌いでないのは【公衆便所】だけだ。

 アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハアハハハハハハハハハハアハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハアハハハハハハハハハハハハハアアハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハアアハハハハハハハハハハアハハハハ

 そのとき、遠くの方で笑い声が聞こえた。とても嫌な笑い声だった。明らかにそれは嘲笑であり、その矛先は私に向けられていた。

「誰だ!?」

 私は問い質した。けれども笑いの主は答えない。

「出てこい!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 私はあらん限りの憤怒を込めて叫んだ。空間が私の怒りで振動している。

「最近どうよ??元気????よろしくやっちゃてクレてる!?」
 笑い声の主が答えた。

「お前は誰だ!?」

「ボクが誰かって?YOUの探している人間さ。」

「まさかHello…!?」

「ピンポィーーン♪山下よん。YOUの親友の、Helo山下だおん☆☆」

「ふざけるな!!貴様が私の友人であるわけがないだろうが!」

「何イってるんだい。とっても退屈してたじゃんか。YOUは、退屈で退屈で仕方がなかった。YOUはとっても哀れな人間よ。とても不幸な人だよ。YOUはいっつも助けを求めてたじゃん。ずっとずっと、叫んでたじゃない。一人ではもう、どうすることもできなくなっていたんだね。だからボク、YOUを助けにきたよ。」

「いい加減にしろ!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

「今はわからなくてもいいさ。YOUは絶っ対に認めないだろうしね。YOUはボクを心から必要としてるケド、YOUのプライドはそれを受け入れようとはしないだろうネ☆YOUはYOUで作った牢獄にYOUを閉じ込めて、YOU自身を拷問にかけている。でももう限界ヨ。YOUは崩壊し始めてる。ホラ昔誰かが言ってたデショ?【オマエはもう、死んでいる】って。あれだヨ、アレ☆☆☆☆」

「うるさい!!!!」

「ともかく早く伊豆においでヨ。ボクはそこでYOUを待ってるヨ。ボクはYOUで、YOUはボクだ。YOUが壊れちゃったらボクも存在できなくなってしまうのヨ。だからもう、これ以上YOUにリーダシップを与えておくわけにはいかないのん☆」

「言われずとも行くさ!。必ずや貴様を捕まえて、成敗してやる!」

「ほーら、もーワクワクしてるwwwなんっでわっかんないかなあ♪ホントにYOUは頑固者なんだからwwwでもボク、YOUのそういうトコ、ダイスキよん☆」

「貴様ァ!!これ以上私を愚弄すると…!!!!!!!!!」

「おーコワいコワいwwwあ、そだ。伊豆で待つ、だけじゃあんまりだから、もうひとつだけヒントあげるね♪

 【Hello山下はYOU自身。Hello山下は左きき。】

 覚えときなヨ。きっと役に立つからさ☆じゃ、GoodLuck&GoodBy!!」

「待て!!!!!どういうことだああああああああ!!!!????」

                     (続く) 文責:魔王源

2008年11月16日

【小説】「公衆便所男⑩」

 新曲発表が優先するのでこっそりアップ。ほいではいきます♪

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 カーテンから差し込む陽の光で私は目覚めた。

「夢…か…。」

 ベッドの上で呟いた。時刻はAM11:00を回ったところだ。
 それにしてもイヤな夢だった。Hello山下は、ついに私の夢の中にまで現れた。奴のお陰でもう二週間はぐっすりと眠れていない。

【Hello山下はYOU自身 Hello山下は左きき】

 私は夢の中でHello山下が言った謎のメッセージを手帳に書きとめた。無論これは夢の中で出た言葉であり、現実のHello山下とは何の関係もない。しかし、何か引っかかるものがある。もしかすると手掛かりになるかもしれない。「夢を通して問題解決のヒントを得る」というのは歴史の中に何度も登場するエピソードである。心理学者達はこの奇跡的な現象を潜在意識からのメッセージとして説明している。そのような奇跡が私の身に起こらないとも限らない。少なくとも覚えておいて損はないと思った。

 今日は11月17日の日曜日だ。明日は伊豆へ向かうことになる。月曜日だが有給休暇を取得済みだ。約束の時間である15時までにはなんとしても伊豆に辿り着き、Hello山下を捕縛しなくてはならない。
 それにしてもHello山下とは何者なのだろう?これまでに起こった事件から総合的に判断して、どうやらHello山下は【私をよく知る人物】であるようだ。
 当初私は、Hello山下を単なる物好きなトイレマニア位にしか考えていなかった。しかし、私のマンションに奴のラクガキを見つけた今となっては、そうは思わない。奴は私のトイレット・ルートを入念に調査した上で意図的にメッセージを残している。
 一体全体、何のためにそんな事をするのか?単なるイタズラにしてはあまりにも手が込み過ぎている。これ程の労力を払ってラクガキを仕掛けている所を見ると、Hello山下には何か「動機」がありそうだ。その動機とはなんだろう?怨恨の類だろうか。
 
 Hello山下はA電機の人間だろうか?出世には全く興味のなかった私だから、A電機の同僚に恨みを買うような真似はしていない筈だ。唯一可能性があるとすれば労働組合の連中だろう。A電機在籍時代、私は組合が強い影響力を会社に持っていることを利用して、かなり悪質なサボタージュを行った。私の職務怠慢は上層部でも問題となり、このため労働組合は活動の規模を縮小せざるを得なくなった。そのことで私に恨みを抱いている組合の人間が存在しても不思議ではない。
 当時組合を仕切っていたのは「大垣」という男だった。だとすると大垣がHello山下の正体であろうか?

 そういえば、私と大垣は同じ大学出身である。大垣はいわゆる所の「アカ」であった。私が大学にいた頃は、全共闘の紛争もとっくに終わっており、本気で国家を転覆させようなどと企てる学生は皆無であったものの、共産党カブレの連中は少数ながら存在した。
 大垣はそんな連中の一人だった。確か「ニッポンのミライをアカるくする会」とかいう胡散臭いサークルに所属していた筈だ。大垣はサークル活動の一環として、環境問題だの人種差別問題だのを取り上げては拡声器片手にアジテーションを行っていた。このアジテーションは極めて軽薄であり、その主張には全く一貫性がなかった。その時々、世間で話題となっている旬の社会問題を槍玉に挙げて、重箱の隅をつつくような批判を浴びせていたに過ぎない。実のところは注目を浴びたいだけのデモンストレーションであった。
 大垣のやっていた事は実に無意味でくだらないものばかりであったが、この活動が当時A電機で労働組合長をしていた男の目にとまった。それで大垣は4年も留年していたのにA電機に入社できたのだ。

 そう考えてみると、Hello山下が大垣である可能性は薄い。大垣は単に働くことが大嫌いであり、仕事をサボるためにゴネているだけであって、確固たる思想や信念からは程遠い男だからだ。あの大垣が組合の活動規模が縮小した位の事で復讐を考える訳がない。実のところ、仕事が少なくなって喜んでいる位だろう。

 となると真犯人はBEFREEの人間だろうか。さしたる危害を加えた覚えは私にはないが、彼らにとって私が疫病神であることは間違いない。BEFREE社員の月給は経営陣クラスでも30万強だが、私は手取りで42万も貰っている。これは、私がA電機からBEFREE移籍を打診された時の交渉の成果だ。

「地位や役職・職場環境などはどうだっていい。賃金だけはA電機と同程度貰わなくては辞令は受け入れられない」

 と、私は決死の覚悟で上司に食い下がった。どのみち真面目に働く気などないから左遷は一向にかまわないが、生活レベルを下げさせられてはたまったものではない。私は現在のマンションから引っ越すつもりはないし、愛車Lexusの維持費もバカにならない。熱帯魚に餌だってやらなくてはいけないし、週に一度のおっぱいパブ通いだって止める気はないのだ。そんな訳でBEFREEにとって私の存在は随分な負担になっている筈だ。だから、嫌がらせを受けている可能性は十分にあり得る―――

 と、そのような思索に耽っていると、時刻はPM5:00を回っていた。私は冷蔵庫から発泡酒とチーズ鱈を取り出し、TVのスイッチを入れてソファに座り込み、発泡酒と呷った。

「Hello山下・・・必ず見つけ出して成敗してやる…!!」

 ニュース番組を見ながらそう口にすると、心が高揚してきた。明日が待ち遠しい。まるで遠足に行く前日の小学生のような気分である。

 ふと窓を見やると、11月の太陽がビル街に沈もうとしていた。

                     (続く) 文責:魔王源

2008年11月19日

新曲「真・天誅」公開

このまえのライブでもやった新曲「真・天誅」が完成しました!
初代天誅を作ってから約10年、何も変わっていない我々の姿を今、ここに曝け出す!

http://tenchu.jp/mp3/shin_tenchu.mp3

【新曲】「真・天誅」歌詞アップします。

祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響あり。
沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理を顕はす。
奢れる者久しからず、ただ春の世の夢の如し。
猛き人も遂には滅びぬ。偏に風の前の塵に同じ――


俺達天誅 バブルの申し子 メンバー全員長男坊
言いたいことなど何もねえ 主義主張は皆狂言だ
メッセージなんぞナッシング つまりは単なる売名行為
学べる事なぞ一切ねえ 空虚で空疎な存在だ

飽食時代に生まれ落ち 何不自由することなく育ち
大学入れば麻雀三昧 今じゃあすっかりサラリーマン
苦労も苦痛も知りはしない ぬるーい三十路のピーターパン
生きる意味なんぞわかりゃしない 酒呑み騒いでお終いだ

だからなんだってんだこの野郎 この憤りどうしてくれよう
心駆け巡る憤怒と憎悪 哀れなる叫びを聞いてくれ
中身伴わぬ魂の咆哮 勢いだけのイデオロギー
せめて君のハートに届くこと祈らん 今ここに見参 天誅

(オーベイビーアイラブユー オーベイビーアイニージュー
 オーベイビーアイキスユー オーベイビーアイラブセックス)

ヌルさが至上のR25 いわゆるロストジェネレーション
求めるものなど何もねえ ハングリーさの欠片もねえ
温室育ちの腐った蜜柑 それが僕等ですけど何か?
どいつもこいつも自分探し 留学 芸術に 習い事

知識教養で理論武装 グルメ旅行でストレス解消
B級スポット巡り廻り ブログで体験書き綴りゃ
拍手喝采のレスがつき 何か救われた気分になる
いかんともし難いヌルい世代 さっくりふわっとアイデンティティ

だからどうしたってんだこのスットコドッコイ この悲しみをどうしてくれよう
胸に湧き上がる悲壮な情熱 滑稽な舞いを見届けてくれ
何の意味も無い魂の咆哮 口だけ達者なロビイスト
せめて貴方のハートに届くこと祈らん 今ここに見参 天誅

(オーベイビーアイラブユー オーベイビーアイニージュー
 オーベイビーアイキスユー オーベイビーアイラブセックス)


多摩ちゃん        天誅。
電車男           天誅。
ダンボール肉まん    天誅。
やわらか戦車       天誅。
リプレイ外し        天誅。
ノマ猫           天誅。
チョイ不良親父      天誅。
ビリーズブートキャンプ  天誅。
パナウェーブ        天誅。
ドリームキャスト      天誅。
ムネオハウス       天誅。
スーパーフリー      天誅。

2008年11月30日

【小説】「公衆便所男⑪」

11/18 AM5:30―――

 目覚まし時計のけたたましいアラーム音が寝室に鳴り響き、私は起床した。
 外はまだ薄暗い。全身にエネルギーが漲っている。シャワーを浴び、旅の支度を整えた。

 準備は万全である、私は玄関に掛かっている愛車Lexusのキーをわし掴みにすると、ドアを開けて外に飛び出した。晩秋の冷たい空気が肌に心地良い。雀のさえずりが祝福してくれているようだ。私は思い切り深呼吸をした。
 駐車場へ向かい、愛車Lexusに乗り込む。シートベルトを締め、サイドブレーキを解除し、ブレーキを踏みしめてキーを回す。心地よいエンジン音が早朝の駐車場に響き渡る。バックミラーとサイドミラーの位置を整え、ギアをパーキング・モードからドライヴ・モードへと切り替えると、我が相棒Lexusはゆっくりと動き始めた。オートマチックトランスミッションがギアを2速・3速・4速とチェンジしていき、徐々にスピードを上げていく。Lexusの洗練されたボディが空を切り裂く。

 心躍る旅の始まりである。カーステレオのヴォリュームを最大にし、ジョージ=ガーシュウィンの「ラプソディ・イン・ブルー」を流しながら国道16号線を時速73Kmで疾走する。対向車線を、ウーファーを搭載したVOXYが浜崎あゆみの「M」を爆音で流しながら通り過ぎていった。いつもなら舌打ちのひとつでもしている所だろうが、今日の私は一味違う。
 私には明確なミッションが存在する。それは【Hello山下の捕縛】である。Hello山下を縛り上げ、一泡吹かせてやれば、どんなに胸がすっとすることだろう。想像するだけでゾクゾクと血沸き肉踊る。脳内で大量のノル・アドレナリンが分泌されて全身を駆け巡り、私の肉体と精神を戦闘モードへと変容させていく。
 私はハンドルを握り締め、充血した目で虚空を見つめた。そこにはまだ見ぬHello山下の薄ら笑いを浮かべた憎き顔が浮かんでいた。顔がぼんやりとしており、細かな部分は判別できない。

「Hello山下ァァァァァァァ!!!待ってろよ!!!!!!」

 オーケストラの盛大な演奏に合わせるように咆哮した。最高の気分である。
 
 厚木ICでハイウェイに上がると、私はアクセルをめいっぱい踏み込んだ。愛車LexusのV8エンジンと高出力モーターが唸りを上げ、追い越し車線を疾走する。絶対的な動力性能・圧倒的な静粛性・力強い瞬発力―――プレミアム・カーに求めらる条件の全てをLexusは兼ね備えている。時刻はAM8:12。時速は122km。BGMはベートーベンの第九だ。最早誰も私を止められない。
 Lexusと私は一陣の風となり、ただ一路伊豆を目指した。


 が、ハイウェイを疾走していると、突如ウンコがしたくなった。その時絶妙なタイミングで「P」マークの交通標識が目に飛び込んできた。パーキングエリアである。私は方向指示器を左に点灯させ、鮮やかなハンドリングで左の車線へと移動していった。1km程走った後、私とLexusはパーキングエリアへ吸い込まれるようにして入っていった。

 パーキングエリアは小規模なものであった。公衆便所と自動販売機が存在するだけのシケた施設である。
 いち公衆便所愛好家として、パーキングエリアのトイレットについても語らねばなるまい。はっきり言って私はパーキングエリアの公衆便所が好きではない。何故かと言うと「臭い」からだ。
 パーキングエリアの便所は臭い。それは取りも直さずパーキングエリアの便所に排泄されるウンコが臭いという事だ。パーキングエリアの便所に溜まったウンコからは、何か貧しい臭いがする。恐らくウンコの材料となっている食物が貧しいせいだろう。きっとコンビニ弁当や吉野屋の牛丼ばかり食べている者たちがここで用を足すのだ。だからウンコの臭いが貧しいのである。食に美学が無い者は、ひり出すウンコの臭いからも美学が感じられない。

 いち公衆便所愛好家として「ウンコに美学を持て」と強く主張したい。
 理想の公衆便所に巡り合い、真のデキルウンコ・スタイルを身に着けるために、私は常日頃からウンコについて考えている。朝・昼・晩と食べているものが、腸内でいかなるウンコへトランスレートされるか?私は毎日イメージする。そして、明確なヴィジョンを持って公衆便所へと向かうのだ。

 私は常に自問自答している

「今日のウンコは何色だろう?」

 と。

                      (続く) 文責:魔王源

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