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小説【公衆便所男③】

 私は今、第三の便所を目指して町を闊歩している。

 まったく今日はツイてない。時刻はPM0:30を回ったところである。休憩タイムも既に半分を過ぎようとしているにも関わらず、未だウンコができていない。
 今や私の便は緊張のせいか、直腸を逆流して大腸の奥深くへと潜り込んでしまった。これは困ったことだ。永らく大腸に対流したウンコは、水分を奪われて固くなり、干からびたようになる。こうなると大腸の蠕動運動は緩慢になり、便通に支障をきたすようになってしまう。
 これがいわゆるところの「便秘」である。「便秘」程不愉快なものはない。体内に無駄な老廃物が残留していることを思うと、どうしようもなく不快な気持ちになる。ウンコに封じ込められた毒素が溶け出して全身に回るのではないかと気が気でならない。
 ともかく、いつまでもこんな糞詰まり状態を放っておくわけにはいかない。一刻も早く理想のトイレットを見つけなければならぬ。

 次に私が向かったのは駅から800mほど離れた場所にある、スーパーに敷設されたトイレであった。日頃私は、ここで昼食用のカップラーメンや菓子、煙草などを購入している。しばしば、そのついでに排便に立ち寄るのだが、ここのトイレは悪くない。スーパー自体が3年ほど前に新築されたものであるため、トイレも新しくて清潔である。ウォシュレット完備・センサー式自動水栓の近代的なトイレだ。
 ところで、今年で齢43になる私だが未だに「ウォシュレット」というものを利用したことがない。肛門に対してジェット水流を浴びせかけるという行為に、大きな抵抗を覚えるからである。

「一度経験してしまえば、アレなしではいられなくなりますよ。」

 と会社の同僚達は口を揃えて言う。が、私の肉体と精神は「ウォシュレット」というものに対しては、強い拒否反応を示してしまう。「肛門に水流」という行為が変態的に思えて仕方ないのだ。このことを思うとアナルの辺りがムズムズして、どうにも気持ちが悪くなる。
 加えて私にとっては【紙で拭く】という行為の持つマテリアル感がたまらない魅力なのである。だからこれからも、恐らくこの命が尽きる時まで私は、排便の後はトイレットペーパーで肛門を拭き続けることだろう。たとえそれが環境破壊に繋がるアンチ・エコ的行為なのだとしても、ケツだだけは、紙で拭き続けたい―――

 などという雑想に耽りつつ、大通りを10分ほど歩いていくと、目的地であるスーパーマーケットに到着した。
 私はとりあえず、売り場で缶コーヒーとマルボロメンソールを購入し、それから排便へと赴くことにした。スーパーに対する一応の筋を通しておきたかったのだ。スーパーマーケットとて、慈善事業で店舗に便所を敷設しているわけではない。顧客満足の一翼を担えるのであれば…との一心で客に便所を開放している筈である。トイレットペーパー・液体石鹸・エアータオルを稼動させる為の電気料金・清掃に使用するサンポール・清掃を行う従業員の賃金etc・・・それなりのコストを費やしてトイレット運営を行っているのである。それをタダで利用するというのは私の信条に反するのである。GHQ総司令官・マッカーサー元帥の名言【働かざるもの食うべからず】ではないが【商品を購入せざるものウンコせざるべからず】である、と私は声を大にして叫びたい。
 
 無駄話が長くなったが、兎にも角にもこのような経緯で、私はトイレの大個室へと歩いていった。


                            (続く)  文責:魔王源

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2008年09月27日 22:53に投稿されたエントリーのページです。

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